
2023年6月14日に「不正競争防止法等の一部を改正する法律案」が法律第51号として公布され、商標法にいわゆるコンセント制度が導入されることとなりました。そして、いわゆるコンセント制度(先行する登録商標の権利者の同意があれば、類似する商標であっても併存登録を認める制度)の導入に関しては、施行日は、令和6年4月1日となりました(2023年12月記事追記)。出典元:経済産業省https://www.meti.go.jp/press/2023/11/20231124001/20231124001.html 。また、令和6年1月5日付けで、特許庁より「コンセント制度の導入」と題した解説ページが公表されています。
なお、不正競争防止法等の一部を改正する法律の施行期日を定める政令等により、「不正競争防止法等の一部を改正する法律案」改正内容ごとに施行日が違いますので注意が必要です。
施行日は、令和6年4月1日 「先行する登録商標の権利者の同意があれば、類似する商標であっても併存登録を認める制度(コンセント制度)の導入」に関して
先行する登録商標の権利者の同意があれば、類似する商標であっても併存登録を認める制度(コンセント制度)の導入に関しては、施行日は、令和6年4月1日となりました(2023年12月記事追記)。出典元:経済産業省https://www.meti.go.jp/press/2023/11/20231124001/20231124001.html
また、令和6年1月5日付けで、特許庁より「コンセント制度の導入」と題した解説ページが公表されました。
商標法にいわゆるコンセント制度が導入されます。
日本の商標法第4条1項第11号は、先願の他人の登録商標と同一又は類似であって、指定商品若しくは指定役務が同一又は類似である商標は登録を受けられないことを規定しています。
他方、米国等では先願の他人の登録商標に抵触する商標が出願された場合でも、先願登録商標の権利者の同意があれば両商標の併存登録を認めるいわゆるコンセント制度が導入されていました。
日本ではコンセント制度は導入されていなかったため、アサインバック等の手法により権利取得を目指す方法が取られていました。しかしながら、出願人の交渉や費用の負担等が大きい等の問題点がありました。
そこで国際的な制度調和等の観点から、商標法に新しく商標法第4条4項が追加され、いわゆるコンセント制度が導入されることとなりました。
コンセント制度導入の趣旨
中小・スタートアップ企業等による知的財産を活用した新規事業でのブランド選択の幅を広げる必要性、国際的な制度調和の観点等が導入趣旨です。
商標法第4条4項
具体的には、新しく商標法第4条4項が追加されます。
商標法第4条4項 「第一項第十一号に該当する商標であつても、その商標登録出願人が、商標登録を受けることについて同号の他人の承諾を得ており、かつ、当該商標の使用をする商品又は役務と同号の他人の登録商標に係る商標権者、専用使用権者又は通常使用権者の業務に係る商品又は役務との間で混同を生ずるおそれがないものについては、同号の規定は、適用しない。」
すなわち、商標法第4条1項第11号に該当する商標(先願登録商標と同一又は類似の商標等)であっても、(1)その商標登録出願人が、商標登録を受けることについて同号の他人の承諾を得ており、(2)当該商標の使用をする商品又は役務と・・・混同を生ずるおそれがないもの、については商標法第4条1項第11号の規定が適用されなくなります。
登録後の混同防止の担保
コンセント制度の適用により類似関係にある商標が併存登録される可能性がでてくるため、併存登録された商標につき、登録後の混同防止措置の担保が認められる。
1.一方の権利者の使用により他の権利者の業務上の利益が害されるおそれのあるときは、権利者及び先行登録商標権者は、当該使用について両商標間における混同を防ぐのに適当な表示を付すべきことを請求(混同防止表示請求)することができる(第24条の4第1号及び第2号)。
2.一方の権利者が不正競争の目的で他の権利者の業務に係る商品又は役務と混同を生ずる使用をしたときは、何人も(一般の消費者・取引者等の第三者含む)その商標登録を取り消すことについて、審判(不正使用取消審判)を請求することができる(第52条の2第1項)。
「混同を生ずるおそれ」の考慮要素については審査基準や運用を注視必要
商標法第4条4項 の適用に関しては、他人の承諾のみならず、混同を生ずるおそれがないことも証明が必要です。
注意すべきは、「混同を生ずるおそれ」の考慮要素については、まだ不明確な点があり、商標審査基準WG等の議論から得られる情報によれば、考え方の参考としては、以下のようなものが考えられています。
「混同を生ずるおそれ」については現在のみならず将来の混同のおそれの有無も審査する必要がある。そして、将来にわたって変動しないといえる事情としては、いくつかの類型が例示されています。
①当事者間で将来にわたって変更しないことが合意された使用態様
②将来にわたる混同防止・解消のため合意された競業避止等
③合意以外にも、使用態様等について将来にわたって変動する可能性がない(低い)といえるようなファクトに基づいた
特段の事情。この特段の事情の例としては、・長年特定の商品にのみ当該商標を使用してきたというような事情、・当事者の業務の性質からして全く領域の異なる事業に進出する可能性がないというような事情
出願人はこのような類型に即して説明をする案が検討されています。
一通の合意書に記載する形式で提出を求められることが検討されています。(参考)
上記のような内容を説明するため、一通の合意書に記載する形式で提出を求められることが検討されています。以下はあくまでも現時点での参考情報ですので変わる可能性もあります。常に最新の情報を特許庁HP等から取得ください。
1.他人の承諾を審査するための、先行商標権者による、出願商標の登録に対する承諾
2.現在(査定時)の混同を生ずるおそれを審査するための、現在における両商標の具体的な使用状況(販売提供地等)の、両当事者による相互の確認
3.将来(査定後)の混同を生ずるおそれを審査するための、現在における両商標の具体的な使用状況(販売提供地等)を将来にわたって変更しないことについての両当事者による合意
「混同を生ずるおそれ」の考慮要素に関しては、今後のさらなる情報の発表にも注意が必要です。
実務的な影響
ご存知の通り、商標法第4条1項第11号の拒絶理由は、実務で受ける拒絶理由の中で最も多く受ける拒絶理由の一つです。商標法第4条1項第11号の拒絶理由の解消方法として、アサインバック以外に、商標法第4条4項の選択肢(いわゆるコンセント制度の選択肢)が出来たことは、出願人にとって有益となります。特に、商標法第4条4項の選択肢(いわゆるコンセント制度の選択肢)は、アサインバックと比べて、手続きが簡便、費用が安くなりやすいと考えられます。商標法第4条4項の運用方法や審査基準については1年以内の施行日に向けてさらに注視していく必要があります。
最終更新日2024年1月10日
