米国特許法101条の特許適格性に関して、2019 Revised Patent Subject Matter Eligibility Guidance と共に公開されている仮想事例41

USPTOで公開されているEligibility Examples 37 to 42のうちEligibility Examples 41における代表的な事例及びその事例のポイントを記載しています。実際のケースと近い仮想事例を参考にした論理展開が有効です。なお、本記事の理解のためには、USPTOのMPEP2106における米国特許法101条の特許適格性の判断のフローの理解が前提となっていますので、必要な方は先にこちらをご確認ください。

目次

Example 41 – Cryptographic Communications

Claim: (ガイドラインで記載されている仮想クレーム)

A method for establishing cryptographic communications between a first computer
terminal and a second computer terminal comprising:

receiving a plaintext word signal at the first computer terminal;
transforming the plaintext word signal to one or more message block word signals
MA;
encoding each of the message block word signals MA to produce a ciphertext word
signal CA, whereby CA=MAe (mod n);
where CA is a number representative of an encoded form of message word
MA;
where MA corresponds to a number representative of a message and 0 ≤ MA ≤
n-1;
where n is a composite number of the form n=pq; where p and q are prime numbers; where e is a number relatively prime to (p-1)(q-1); and
transmitting the ciphertext word signal CA to the second computer terminal over a
communication channel.

Claim 1の概略

第1コンピュータ端末と第2コンピュータ端末との間において暗号通信を確立するための方法

MPEP2106に規定される米国特許法101条の特許適格性の判断のフローに沿った考え方

ステップ1:法定カテゴリー(Statutory categories)に属するかについてはYES、クレームは方法を記載している。

ステップ2A - Prong 1に関して :

(一部略)クレームには、暗号文ワード信号 CA を生成するために使用される数式または計算が記載されている。 したがって、この請求項は数学的概念を述べている。この例では、クレームが数式または計算を明示的に記載しているため、「符号化」ステップは数学的概念を述べていると判断される。→ステップ2A - Prong 2に進む

ステップ2A - Prong 2に関して: 

(一部略)請求項における追加要素の組み合わせは、司法上の例外を実際のアプリケーションに統合している。 特に、追加要素の組み合わせにより、通信チャネル上を暗号文ワード信号をコンピュータ端末に送信する実際のアプリケーションに、数学的概念の使用を十分に限定する特定の方法において、数式および計算を使用している。従って、数学的概念は、プライベートネットワーク通信を保護するプロセスに統合され、メッセージが送信される前に、お互いを知らない、または秘密鍵を共有していない人々のコンピュータ間で暗号文の単語信号が送信できる。(中略)このクレームは、記載された司法上の例外に向けられたものではなく、クレームは特許適格性を有する。

まとめ

Step 2A Prong 1において、本件のクレームは数式により構成要素が特定されている部分が比較的あることから数学的概念(司法上の例外)を記載していると判断されている。

その上で、Step 2A Prong 2において、実際のアプリケーションに数学的概念の使用を十分に限定する程度まで特定できているためクレームは特許適格性を有するとされている。司法上の例外を実際のアプリケーションに統合できているかどうか、所定の効果を発現できる程度に具体化されて実際のアプリケーションに統合できているかどうか、ということが保護適格性を主張する上で有効となっていると考えられる。

このような米国特許法101条の特許適格性に関するガイドラインの仮想事例の考え方を理解しておくことは、米国で101条の拒絶理由を受けることをなるべく防ぐ、又は、101条の拒絶理由を受けてしまった後の対応を検討する上で重要です。疑問点や詳細についてはお気軽にご相談ください。

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