【特許】外国への特許出願を行う際の選択肢、パリ条約による外国出願(パリルート)と、PCT国際出願(PCTルート)の違い

日本国の国内出願に基づいて外国への特許出願を行う際に、パリ条約による外国出願(パリルート)と、PCT国際出願(PCTルート)とが選択できます。パリ条約による外国出願(パリルート)と、PCT国際出願(PCTルート)とは、何が違うのか、どういったメリットデメリットがあるのか、非常に質問が多いところですのでポイントをまとめました。

目次

共通点

パリ条約による外国出願(パリルート)と、PCT国際出願(PCTルート)とは、どちらも外国での特許出願を行うことができ、同様に外国で特許権を得られる点で共通しています。

差異点

パリ条約による外国出願(パリルート)と、PCT国際出願(PCTルート)とは、どちらも同様に外国で特許権を得られるのですが、それぞれ異なる条約に基づいています。

パリ条約による外国出願(パリルート)は、工業所有権の保護に関するパリ条約に基づいています。

PCT国際出願(PCTルート)は、特許協力条約(Patent Cooperation Treaty)に基づいています。

それぞれ異なる条約で手続きが定められているため、海外に出願する手続きが異なっています。従って、パリ条約による外国出願(パリルート)と、PCT国際出願(PCTルート)とが、どちらが自社の特許出願の事情に適しているかを検討する必要が生じてきます。

パリ条約による外国出願(パリルート)

国内出願に基づいて個別に外国に直接出願する点が特徴です。権利を取得したい国に個別に出願することになります。

メリット

権利を取得したい国に個別に直接出願するため、PCT国際出願のような状態を経ることなく比較的早期に外国での出願を行うことができる。

出願国が少ない場合には、PCT国際出願に比べて出願費用が安くなる場合がある(PCT国際出願の費用に関し減免が効く場合には費用差は小さくなり、必ずしも安くならない場合もあります)。

PCT国際出願を利用できない国であっても、パリ条約による外国出願(パリルート)を利用できる国がある。例、台湾、アルゼンチン、ベネズエラ等。

デメリット

優先日(基礎出願の出願日)から1年以内に、英語等の翻訳を準備して個別に外国への出願手続きを終える必要があります。米国での権利取得を目指す場合には、1年以内に、米国出願手続きを終えます。さらに、中国での権利取得を目指す場合には、1年以内に、別途中国出願手続きも終える必要があります。

原則として、出願時までに英語の翻訳文等を準備する必要があり、翻訳文の費用発生や現地代理人の費用発生が比較的早い段階になる点がデメリットになります。

PCT国際出願(PCTルート)

PCT国際出願は、国際出願(国内出願とも外国出願とも異なる出願)を、自国の特許庁に対し提出します。このPCT国際出願は、1通の出願を提出するのみですが、条約の規定により157か国の加盟国全てに出願したものとして扱われます。30月の期間内に国内移行という手続きをとることにより、権利を取得したい外国の国内出願となります。

メリット

優先日から1年以内に、日本語のまま日本の特許庁に出願手続きを行うことができます。PCT国際出願の費用は、減免適用を受けられる場合には費用はかなり抑えられます。

優先日から30か月以内に、権利を取得したい国へ移行手続きを行えばよく、翻訳費用の発生時期を国内移行時(つまり約30月)まで遅らせることができます。また、各国での出願時にかかる現地代理人の費用発生を約30月まで遅らせることができます。

出願は全加盟国にしたのと同じ効果が得られた状態で、権利をどの国で取得したいかを30月まで決めずにビジネスの状況を見ることができます(パリルートでは1年以内に出願国を決定しないといけません)。

PCT国際出願を行うと、特許取得の可能性を示した国際調査報告が審査官により作成されます。従って、国際調査報告は今後の権利化に向けた参考となります。

デメリット

パリルートではなかったPCT国際出願という出願を行う分の費用がかかる点です。

一方で、現地代理人の費用は若干安くなることが多く、比較的簡単且つ安価な手続きで多数の国に出願できますので、3~4か国を超える国に出願する場合には、PCT出願をされた方がコストが安くなることが多いです。

PCT国際出願やパリ条約による外国出願に関しては条約の規定に沿ったプロセスで進行しますのでサポートしてくれる代理人が重要です。

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