米国特許法101条の特許適格性に関するMPEP2106の考え方

米国特許法101条の特許適格性に関する判断は、Alice判決等、様々な判決があり、確実な判断が難しいところです。USPTOは客観的な審査を担保するため、2019年にガイドラインも発表しました。これに基づき、米国特許法101条の特許適格性に関する考え方がMPEP2106において示されています。ソフトウェア関連発明をUSで出願する際には、USで101条の拒絶理由を受けないように極力手当をしておくことが大事です。MPEP2106を理解すれば、USで101条の拒絶理由を受ける確率をより下げることができると共に、101条の拒絶理由を受けた後の対応の検討についても役立ちます。

引用:USPTOのMPEP2106のサイトより https://www.uspto.gov/web/offices/pac/mpep/s2106.html

USPTOのMPEP2106には、米国特許法101条の特許適格性の判断のフローが示されています(上記の2つの図)。

米国特許法101条の特許適格性の判断は、まずはクレーム全体としてクレームの合理的に最も広い解釈(broadest reasonable interpretation)を行うところからスタートします。

目次

ステップ1:法定カテゴリー(Statutory categories)に属しているかの判断

クレームが法定カテゴリー(プロセス、機械、製造物および物質の組成物)に属しているかの判断を行います。

クレームが法定カテゴリーに該当しない場合には(ステップ1がNOの場合)、クレームは特許適格性を有していないと判断される(上図の右下に進む)。ステップ1で特許不適格と判断される例(すなわち、クレームが法定カテゴリーに属さない)は、データ自体、プログラム自体、電磁波信号自体、人そのもの、などです。MPEP 2106.03 参照。

クレームが法定カテゴリーに該当する場合には(ステップ1がYESの場合)、PATHWAY Aに進みます。

PATHWAY A

分析が合理化(streamlined)できる場合として、全体として見て クレームの特許適格性が自明であるような場合には、PATHWAY Aとして特許適格性ありと判断します。PATHWAY Aに進まない場合、ステップ2Aに進みます。

ステップ2A:司法上の例外(Judicial exceptions)→改訂されたステップ2AのPRONG ONE

改訂されたステップ2AのPRONG ONEにおいては、クレームが司法上の例外となる自然法則、自然現象又は抽象的アイデアを記載しているかを判断します。

PRONG ONEにおいて、クレームが自然法則、自然現象又は抽象的アイデアを記載していないと判断される場合(NOの場合)には、クレームが司法上の例外(judicial exceptions)に向けられていないPATHWAY Bとして特許適格性ありと判断します。

PRONG ONEにおいて、クレームが自然法則、自然現象又は抽象的アイデアを記載していると判断される場合(YESの場合)には、PRONG TWOの判断に進みます

ステップ2A:司法上の例外(Judicial exceptions)→改訂されたステップ2AのPRONG TWO

PRONG TWOにおいては、クレームが、司法上の例外に加えて、その司法上の例外を現実のアプリケーションに統合するための追加要素(additional elements)を記載しているかを判断します。

クレームが、司法上の例外に加えて、その司法上の例外を現実のアプリケーションに統合するための追加要素(additional elements)を記載している場合(YESの場合)には、クレームが司法上の例外(judicial exceptions)に向けられていないPATHWAY Bとして特許適格性ありと判断します。

クレームが、司法上の例外に加えて、その司法上の例外を現実のアプリケーションに統合するための追加要素(additional elements)を記載していない場合(NOの場合)には、ステップ2Bに進みます。

ステップ2B

ステップ2Bにおいては、クレームが司法上の例外に該当するものと比較して「著しく異なる」追加要素を記載しているかを判断します。

クレームが司法上の例外に該当するものと比較して「著しく異なる」追加要素を記載している場合(YESの場合)には、PATHWAY Cとして特許適格性ありと判断します。

クレームが司法上の例外に該当するものと比較して「著しく異なる」追加要素を記載していない場合(NOの場合)には、特許適格性なしと判断します。

まとめ

このような米国特許法101条の特許適格性に関するMPEP2106の考え方を理解しておくことは、米国で101条の拒絶理由を受けることをなるべく防ぐ、又は、101条の拒絶理由を受けてしまった後の対応を検討する上で重要です。疑問点や詳細についてはお気軽にご相談ください。

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