【特許】【2026年7月1日以降適用】特許・実用新案審査基準が改訂―進歩性の「阻害要因」等の記載が明確化

特許庁の「特許・実用新案審査基準」が改訂され、2026年7月1日以降の審査に適用されています。

今回の改訂では、本願発明の認定、進歩性、拡大先願、先願、新規事項を追加する補正など、特許実務に関係する複数の項目について見直しが行われています。

企業の知財担当者にとって実務上確認しておきたい内容が含まれていますので、本記事では、主な改訂項目と、特に注目したい「進歩性における阻害要因」について紹介します。

目次

2026年7月の主な審査基準改訂項目

今回の改訂では、例えば、以下の項目が改訂されています。

1.第I部第2章第1節「本願発明の認定」

審査官が本願の特許出願の時又は日を必ず確認することが明記されました。

2.第III部第2章第2節「進歩性」

阻害要因等に関する記載が明確化されました。

今回の改訂の中でも、進歩性判断や拒絶理由への対応との関係で確認しておきたい項目です。

3.第III部第3章「拡大先願」

出願人同一の判断について、名義変更等を考慮して実質的に判断することが明確化されました。

4.第III部第4章「先願」

同日出願の一部が審査請求されていない場合について、

出願人が相違する場合の運用の変更
出願人が同一である場合の運用の明確化

が行われました。

5.第IV部第2章「新規事項を追加する補正」

「3.3.1 (4) 除くクレームとする補正の場合」について、引用発明との重なりのみを除く補正でありさえすれば新規事項の追加に該当しない、との誤解を生じる懸念を解消するための明確化が行われました。

「進歩性」と「阻害要因」の改訂

今回の改訂項目のうち、特許実務上、特に注目度が高いものの一つが、進歩性における「阻害要因」に関する記載です。

進歩性の判断においては、審査官は、先行技術の中から論理付けに最も適した一の引用発明を「主引用発明」として選び、主引用発明から出発して、当業者が請求項に係る発明に容易に到達する論理付けができるか否かを判断します。

そして、進歩性が否定される方向に働く要素だけではなく、進歩性が肯定される方向に働く要素についても総合的に評価して、論理付けができるか否かが判断されます。

進歩性が肯定される方向に働く要素として挙げられているものが、

・引用発明と比較した有利な効果
・阻害要因

です。

「阻害要因」

改訂審査基準では、

「副引用発明を主引用発明に適用することを阻害する事情があること」

は、論理付けを妨げる要因、すなわち「阻害要因」として、進歩性が肯定される方向に働く要素になるとされています。

その一方で、今回の改訂では、

阻害要因があるといえる場合であっても、進歩性が肯定される方向に働く要素としての程度には差異がある

ことについても明確にされています。

つまり、「阻害要因があるか、ないか」という二者択一的な判断だけではなく、その阻害要因が進歩性を肯定する方向にどの程度働く事情なのかという点まで含めた評価が問題になると考えられます。

阻害要因として示された4つの例

改訂審査基準では、阻害要因の例として、副引用発明が次のようなものであることが挙げられています。

1.主引用発明の目的に反する場合

主引用発明に適用されると、主引用発明がその目的に反するものとなるような副引用発明

2.主引用発明が機能しなくなる場合

主引用発明に適用されると、主引用発明が機能しなくなる副引用発明

3.主引用発明がその適用を排斥している場合

主引用発明がその適用を排斥しており、採用されることがあり得ないと考えられる副引用発明

4.作用効果が劣る例として示されている場合

副引用発明を示す刊行物等に副引用発明と他の実施例とが記載又は掲載され、主引用発明が達成しようとする課題に関して、作用効果が他の実施例より劣る例として副引用発明が記載又は掲載されており、当業者が通常は適用を考えない副引用発明

以上の4つが、阻害要因の具体例として示されています。

「阻害要因がある=進歩性あり」ではない

改訂審査基準では、阻害要因について、

「進歩性が肯定される方向に働く要素」

と位置付ける一方で、阻害要因を考慮したとしても、当業者が請求項に係る発明に容易に想到できたことが十分に論理付けられた場合には、請求項に係る発明の進歩性は否定されると整理されています。

したがって、

「阻害要因が存在する」
=「直ちに進歩性が肯定される」

という関係ではありません。

むしろ今回の改訂を踏まえると、阻害要因の有無だけではなく、その阻害要因の程度も含め、進歩性が否定される方向に働く事情と進歩性が肯定される方向に働く事情を総合的に評価して、容易想到性の論理付けが成立するかを判断することが重要になると考えられます。

拒絶理由対応における位置づけ

例えば、主引用発明と副引用発明を組み合わせた進歩性欠如の拒絶理由に対して阻害要因を主張する場合にも、単に、

「主引用発明と副引用発明を組み合わせることには阻害要因がある」

と主張するだけではなく、

なぜ当業者がその副引用発明を主引用発明に適用しようとしないのか

を具体的に説明することが、より重要になると考えられます。

他の改定項目

改訂審査基準では後知恵に関する項目や、除くクレームの補正で出願人に説明が求められる点等の記載もあります。実務上の影響や拒絶理由への対応等の相談があれば直接お問合せください。

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