米国国際貿易委員会(ITC)は、米国での特許戦略上も重要な役割を果たすと言われています。昨今では、米アップルのアップルウォッチの最新モデルの販売一時停止に関し、米国国際貿易委員会(ITC)が米国への輸入禁止命令を下した判断が影響して注目を集めました。米国国際貿易委員会(ITC)の特徴の概略について以下にまとめます。
米国国際貿易委員会(ITC)は、連邦裁判所とは別の独立の準司法的機関。
米国国際貿易委員会(ITC)は、違法製品の外国からの輸入に対して、不公正な行為から「米国国内の産業を保護」するため、知的財産権を保護する役割を果たしています。米国国際貿易委員会(ITC)は、連邦裁判所とは別の独立の準司法的機関ですので、連邦裁判所とは独立して知的財産権侵害製品の輸入差止等の判断をします。ITCは、非常に強力な権限を持っておりITCから出された命令には従わなければなりません。
ITCによる命令は、排除命令(exclusion order)、又は停止命令(cease & desist order)
ITCによる命令は、排除命令(exclusion order)、又は停止命令(cease & desist order)です。
排除命令(exclusion order)は、税関での実質上の輸入差し止め命令であり、停止命令(cease & desist order)は、すでに輸入された違法製品の流通を止める停止命令です。
なお、ITCによる命令は、損害賠償命令ではありません。
輸入品のみが対象
ITCでは、輸入品の特許侵害を対象としています。
申立人の請求適格を満たすことが必要
米国内の国内産業を守るという目的があるため、申立人は、米国内で特許に関し実質的に生産活動を行っている等の要件を満たす必要があります。
審理は、陪審員ではなく、行政法判事(ALJ:Administrative Law Judge)により審議される
行政法判事(ALJ:Administrative Law Judge)は、通常は特許関連の仕事を行っている専門家です。従って、地裁における陪審員の公判とは異なっています。
審理手続きが概ね12ヶ月以内で行われる。
審理手続きが早いということは一見メリットでもあるが、注意も必要です。手続きが進むスピードが早いということは、それだけ対応する労力やお金、人員必要ということでもある。質問状や証拠開示の請求に、原則10日以内に応答する必要がある。通常の裁判で1月や2月かけて準備する膨大な資料を、原則10日以内に準備する必要がある。申立人側は事前準備ができるかもしれないが、被申立人側は時間的に厳しい。
まとめ
米国国際貿易委員会(ITC:International Trade Commission)の特徴の概略についてまとめました。昨今では、製品を海外拠点で製造し、米国に輸入することが頻繁に行われていますので、ITCが、知財戦略上果たす役割はますます重要となってきます。
海外での知財戦略を考える上で、米国での特許出願戦略等は非常に重要です。お気軽にお問合せください。