欧州のEU圏で商標登録を取得しようとする場合には、欧州連合商標(EUTM)を欧州連合知的財産庁(EUIPO)に行う方法と、欧州各国に個別に商標登録出願を行う方法とがあります。欧州連合商標(EUTM)は欧州連合の全ての加盟国(27か国)をカバーする一つの商標権を取得できるメリットがありますが、デメリットもあります。欧州連合商標(EUTM)のポイントについて整理しておきたいと思います。
欧州連合商標(EUTM)のメリット1:欧州連合の全ての加盟国をカバー
欧州連合商標(EUTM)の大きなメリットは、一つの商標権で欧州連合の全ての加盟国(27か国)をカバーできることです。更新手続きも一度で行うことができる等のメリットもあります。
欧州連合商標(EUTM)のメリット2:多数国の場合に費用を抑えやすい
欧州連合商標(EUTM)の大きなメリットとして、一つの商標権で欧州連合の全ての加盟国(27か国)をカバーできますので、多数国に出願する場合には、各国に出願するよりも費用が安くなりやすい傾向があります。
欧州連合商標(EUTM)のメリット3:不使用取消について
5年間不使用の商標登録は、取り消される可能性がでてきますが。EU加盟国の1ヶ国でも指定商品・サービスについて当該商標を使用していれば取消されないメリットがあります。
欧州連合商標(EUTM)のデメリット1:非加盟国には別途出願が必要
英国は欧州連合(EU)から離脱したので、英国へは別途出願する必要があります。
ノルウェー、アイスランド、リヒテンシュタイン等も非加盟国ですので個別に出願が必要です。
欧州連合商標(EUTM)のデメリット2:数ヵ国だけを指定しての出願はできない
欧州連合商標(EUTM)は、EU加盟国のうちの数ヵ国だけを指定して出願することはできません。そのため、拒絶される可能性が高い国を除いたり、権利取得をしたい国を選択して出願するという戦略は採れません。
欧州連合商標(EUTM)のデメリット3:いずれか1ヶ国ででも拒絶理由がある場合、商標登録を受けられない
EU加盟国のいずれか1ヶ国ででも拒絶理由がある場合は、商標登録を受けることができません。但し、欧州連合商標の出願日を維持しながら加盟国の国内商標に移行はできる。
また、いずれか1ヶ国の商標権者から、商標登録を無効とすべき旨を求められた場合も、EU加盟国全体で権利が消滅します。
欧州連合商標(EUTM)のデメリット4:相対的拒絶理由の審査が行われないため、自身で調査が必要となる
欧州連合商標(EUTM)に関しては、識別性等の「絶対的拒絶理由」の審査が行われますが、異議申立のない限り、相対的拒絶理由の審査が行われません。
欧州連合商標(EUTM)として商標登録することができても、先行する他人の商標登録(EUTM或いは各国の国内登録)があると、その他人の商標登録の権利侵害となるおそれがあり、安心できないということになります。
従って、先行する他人の商標登録(EUTM或いは各国の国内登録)がある可能性について、自身で出願前に欧州及び加盟国各国の商標を調査することが好ましいです。
また、商標登録後も、類似する商標が相対的拒絶理由の審査が行われない故に登録されてしまう可能性があります。従って、商標権者サイドが類似する商標が登録されるのを排除するために後願を定期的に調査することが好ましいです。
欧州連合商標(EUTM)の出願の必要書類
・商標(見本)
・出願人の名称及び住所
・商品・役務のリスト 各区分について追加の手数料がかかります。
・優先権を主張する場合には、優先権にかかる情報
欧州連合商標(EUTM)の言語指定
第1言語(EU加盟国のいずれかの国の公用語)に加え、第2言語として英語・ドイツ語・フランス語・イタリア語・スペイン語のうちのいずれか1つを選択する必要があります。第2言語に対応可能な代理人をEU加盟国内で選定することが多いかと思います。
まとめ
欧州連合商標(EUTM)の商標登録出願に関しては、上記のようなメリット、デメリットが存在しています。項目数だけ見るとデメリットが多いようにも思えますが、欧州連合商標(EUTM)のメリット1:一つの商標権で欧州連合の全ての加盟国をカバーできるということは非常に大きなメリットです。デメリットを理解した上で、欧州連合商標(EUTM)の商標登録出願を行うのか、各国に直接出願するのかを検討されるとよいかと思います。
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